高い技術を誇る2つの事業で
世界の海の安全を守る。
旧日本海軍の鎮守府が設置されて以来、軍港として発展してきた佐世保港。現在でも海上自衛隊や米国海軍の艦艇が停泊し、当時の面影を残しています。
そんな佐世保港の一角にあるのが松本さんが勤務する佐世保重工業株式会社です。
「当社は海上自衛隊や米国海軍の艦艇をはじめ、海上保安庁の巡視船、地球探査船など、技術難易度の高い船の修繕事業を主に行っています。また、もう一つの事業として、組立式舶用クランク軸の製造を行っています。舶用クランク軸とは、船のエンジン出力をプロペラに伝達する部品で、大きいものだと長さ10m、重さ120トンにもなります。私はこの舶用クランク軸を製造する鍛造部門で勤務しています」
1,300℃に熱された鉄の塊から
高精度のクランク軸をつくりだす
舶用クランク軸の製作は、その大きさもあり、とてもスケールの大きな作業です。
「舶用クランク軸の製作は、加熱炉で1,300℃まで加熱したインゴットと呼ばれる鉄の塊を、3,000トン鍛造プレス機で叩きながら成形を行ない、最後に大型旋盤などの工作機械で高精度に加工していきます。私はプレス機での鍛造工程の補助作業を主に行っています。業務では日常的にクレーン操作や玉掛けを行います。高技専在校中に資格を取得していたため、配属されてから早い段階でスムーズに作業に参加することができました。また、図面を見て製品のイメージを自分の中で組み立てやすいというのは、高技専での訓練の賜物だと思います」
非常に大きな部品である舶用クランク軸ですが、その製造工程では繊細な作業が必要だといいます。
「プレス機を動かす人、クレーンを動かす人以外にも、材料や機械を誘導する人、不純物を取り除く人など、チームで製作していきます。熱した鉄が冷める前に作業を行う必要があるので、自分が何をすべきか、チームが今何をしてほしいのかを考えて速やかに行う必要があります」
直に感じるものづくりの楽しさ。
経験を積んで、より高みへ。
いまのお仕事のやりがいについて松本さんに聞いてみました。
「最初は鉄の塊ですが、作業を一つ一つ進めていくと、どんどん製品が形になっていきます。その様子を見ていると、ものができているんだなと感じます。また、私たちの仕事はチームプレーですので、自分の判断でうまく仕事が進んだときは嬉しいですね」
最後にこれからの目標についても聞きました。
「いまは補助作業員ですが、経験をたくさん積んで、自分でプレス機を使えるオペレータを目指して頑張りたいと思います」
“なりたい自分”を目指しているあなたへ
松本さんからのエール。
高技専では、将来役立つ資格を取得できます。自分が目指したい職業の専門スキルをしっかり学んで、自分の知識・技能として生かせるように頑張ってほしいと思います。また、インターンシップなど、実際に仕事の現場を見ることができる機会もあります。是非積極的にチャレンジしてみてください。
〈取材協力〉
佐世保重工業株式会社
当社は、旧佐世保海軍工廠の巨大な設備を継承し、1946年(昭和21年)創業以来、その設備の拡充、技術革新に努め、自衛艦、巡視船、米艦船、客船などの船舶の修理を行う修繕船事業、日本で2社しか製造していない舶用エンジン向けクランクシャフトなどを製造する機械事業の2事業部門を経営の柱として着実な発展を目指しております。